Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「正勝ちゃん」
しかし、正勝もどうしていいのか分からなかった。彼はただその目を爛々と輝かしていた。その目にはなにかしら、許すまじきものがあった。
「正勝ちゃん! わたしも殺してちょうだい! この鉄砲でわたしも撃ってちょうだい!」
紀久子はふらふらと倒れるようにして屈み、銃を取って正勝の手に渡そうとした。
「正勝ちゃん! わたしも殺してよ。ねえ! 正勝ちゃん!」
「紀久ちゃん!」
正勝は言った。彼女の幼少のときに彼が呼んでいたと同じ呼び方で、正勝は紀久子を呼んだ。しかし、それだけで正勝はなにかしらひどく硬張って、あとを続けることができなかった。
「正勝ちゃん! わたしを撃って。ねえ! わたしを撃って。痛くないように、ひと思いに死ねるようにわたしの心臓を撃ってよ」
紀久子は少女のような態度で言うのだった。
「紀久ちゃん! 心配することはねえ」
正勝は力強く言った。
「紀久ちゃんは昔の紀久ちゃんではなくなって、おれなんかのことはもう馬か牛のように思っているようだげっども、おれはいまだって……」
「そんなことないのよ。わたしだって、正勝ちゃんのこと兄さんか何かのように思っているのよ」