Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme
秋が来たんだ
秋が来たんだ
十月×日
一尺四方の四角な天窓を眺めて、始めて紫色に澄んだ空を見た。
秋が来たんだ。コック部屋で御飯を食べながら私は遠い田舎の秋をどんなにか恋しく懐しく思った。
秋はいゝな……。
今日も一人の女が来た。マシマロのように白っぽい一寸面白そうな女。厭になってしまう、なぜか人が恋いしい。
そのくせ、どの客の顔も一つの商品に見えて、どの客の顔も疲れている。なんでもいゝ私は雑誌を読む真似をして、じっと色んな事を考えていた。やり切れない。
なんとかしなくては、全く自分で自分を朽ちさせてしまうようだ。
十月×日
広い食堂の中を片づけてしまって始めて自分の体になったような気がする。真実に何か書きたい。それは毎日毎晩思いながら、考えながら、部屋へ帰るんだが、一日中立っているので疲れて夢も見ずに寝てしまう。
淋しいなあ。ほんとにつまらないなあ……。住込は辛い。その内通いにするように部屋を探そうと思うが、何分出る事も出来ない。
夜、寝てしまうのがおしくて、暗い部屋の中でじっと目を開けていると、溝の処だろう、チロチロ……虫が鳴いている。
冷い涙が不甲斐なく流れて、泣くまいと思ってもせぐりあげる涙をどうする事も出来ない。