Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

「ヘエ! お高く止っているよ。」

あんまり淋しいんで、声に出してつぶやいてみた。

女が少ないので、船員達が皆私の顔を見る。

あゝこんな時にこそ、サンゼンと美しく生れて来ればよかった。

つかい古した胡弓のような私。私は切なくなって、船底へ降りると、鏡をなくした私は、ニッケルのしゃぼん箱を膝でこすって、顔をうつしてみた。

せめて着物でも着替えよう。井筒の模様の浴衣にきかえると、落ちついた私の胸に、ドッポンドッポン波の音が響く。

九月×日

もう五時頃であろうか、様々な人達の物凄い寝息と、蚊にせめられて、夜中私は眠れなかった。

私はそっと上甲板に出ると、ホッと息をついた。

美しい朝あけである。

乳色の涼しいしぶきの中を蹴って、此古びた酒荷船は、颯々と風を切って走っている。

月もまだ寝わすれている。

「暑くてやり切れねえ!」

機関室から上って来た、たくましい菜っ葉服を肩にかけた船員が朱色の肌を拡げて、海の涼風を呼んでいる。

美しい風景である。

マドロスのお上さんも悪るくはないな。無意識に美しいポーズをつくっている、その船員の姿をじっと見ていた。

その一ツ一ツのポーズのうちから、苦るしかった昔の激情を呼びおこした。