Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

大きく息を吸うともう春だ。この風には、遠い遠い思い出がある。

舗道は灯だ。人の洪水だ。

瀬戸物屋の前には、うらぶれた大学生が、計算記を売っている。

「諸君! 何万何千何百に、何千何百何十加えればいくらになる。皆判らんか、よくもこんなに馬鹿がそろったものだ。」

高飛車に出る、こんな商売も面白いものだな。

お上品な奥様が、猿股を弐拾分も捻って、たった一ツ買って行く。

お母さんが弁当持って来る。

暖かになると、妙に汚れが目にたつ、お母さんの着物も、さゝくれて来た。木綿を一反買ってあげよう。

「私が少し変るから、お前御飯お上り。」

お新香に竹輪の煮つけが、瀬戸の重ね鉢にはいっている。舗道に脊をむけて食べていると、万年筆屋の姉さんが、

「そこにもある、こゝにもあると云う品物ではござりません。お手に取って御覧下さいまし。」

私はふっと塩ぱい涙がこぼれた。

母はやっと一息ついた今の生活が嬉しいのか、小声で時代色のついた昔の唄をうたっている。

たったったっ田の中で……

九州へ行っている父さんさえこれでよくなったら、当分はお母さんの唄でないが、たったかたのただ。

四月×日