Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

「ラムネいりやせんか!」

「玉子買うてつかアしゃア。」

物売りの声が、夕方の波止場の上を満たしている。

紫色の波にゆれて、因の島行きのポッポ船が、ドッポンドッポン白い水を吐いていた。漠々たる浮世だ。

あの町の灯の下で、ポオルとヴィルジニイを読んだ日もあった。借金取りが来て、お母さんが便所へ隠れたのを、学校から帰えったまゝの私は、

「お母さんは二日程、糸崎へ行って来る云うちゃったりやんで……。」

と、キテンをきかしてお母さんが、佗し気にほめてくれた事があった。あの頃、町には城ヶ島の唄や、沈鐘の唄が流行っていた。

ラムネを一本買う、残金四拾七銭也。

夜。

「皆さん、はぶい着きやんしたで!」

船員がロープをほぐしている。小さな舟着き場の横に、白い病院の灯が、海に散っていた。この島で長い事私を働かせて学校へいっていた男が、安々と息しているのだ。造船所で働いているのだ。

「此辺に安宿ありませんか。」

運送屋のお上さんが、宿屋まで連れて来てくれた。

糸のように細い町筋を古着屋が軒をつらねている。私は造船所に近い山のそばの宿へついた。二階の六畳の古ぼけた床の上に、風呂敷包をおくと、私は雨戸をくって海を見た。