Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

私はじっと脊を向けて寝ている男の髪の毛を見ていた。

あゝこのまゝ蒲団の口が締って、出られないようにしたら……。

――やい白状しろ!――なんて、こいつにピストルでも突きつけたら、此男は鼠のようにキリキリ舞いしてしまうだろう。

お前は高が芝居者じゃあないか。インテリゲンチャのたいこもちになって、我々同志よ! もみっともない。

私はもうお前にはあいそがつきてしまった。

お前さんのその黒い鞄には、二千円の貯金帳と、恋文が出たがって、両手を差出していたよ。

「俺はもうじき食えなくなる。誰かの一座にでもはいればいゝけど……俺には俺の節操があるし。」

私は男にとても甘い女です。

その言葉を聞くと、サンサンと涙をこぼして、では街に出ましょうか。

そして私は此四五日、働く家をみつけに、魚の腸のように疲れては帰って来ていたのに……此嘘突き男メ! 私はいつもお前が用心して鍵を掛けているその鞄を、昨夜そっと覗いてみたのだよ。

二千円の金額は、お前さんが我々プロレタリアと言っている程少くもなかろう。

私はあんなに美しい涙を流したのが莫迦らしくなった。

二千円と、若い女優がありゃ、私だったら当分長生きが出来る。