Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

品物のように冷い男のそばへ……。

四月×日

国から、汐の香の高い蒲団を送って来た。

フカフカとしたお陽様に照らされた縁側の上に、蒲団を干していると、父様よ母様よと口に出して唱いたくなる。

今晩は市民座の公演会、男は早くから、化粧箱と着物を持って出かけてしまった。

私は水をもらわない植木鉢のように干からびた情熱で、キラリキラリ二階の窓から、男のいそいそとした後姿を見てやった。

夕方四谷の三輪会館に行くと、もういっぱいの人で、舞台は例の剃刀だった。

男の弟は目ざとく私を見つけると、パチパチと目をまばたきさせて、――姉さんはなぜ楽屋に行かないの……人のいゝ大工をしている此弟の方は、兄とは全く別な世界に生きている人だった。

舞台は乱暴な夫婦喧嘩だ。

おゝあの女だ、いかにも得意らしくしゃべっているあいつの相手女優を見ていると、私は始めて女らしい嫉妬を感じずにはいられなかった。

男はいつも着て寝る寝巻きを着ていた。今朝二寸程背がほころびていたのを私はわざとなおしてやらなかった。

一人よがりの男なんてまっぴらだよ。

私はくしゃみを何度も何度もつゞけると、ぷいと帰りたくなって、詩人の友達二三人と、温い外に出た。