Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme
夕方風呂から帰って爪をきっていたら、画学生の吉田さんが遊びに来た。写生に行ったんだと云って、拾号の風景画をさげて、生々しい絵の具の匂いをぷんぷんたゞよわせていた。
詩人の相川さんの紹介で知った切りで、別に好でも嫌でもなかったが、一度、二度、三度と来るのが重なると、一寸重荷のような気がしないでもなかった。
紫色のシェードの下に、疲れたと云って寝ころんでいた吉田さんは、ころりと起きあがると、
――瞼、瞼、薄ら瞑った瞼を突いて、
きゅっと抉ぐって両眼をあける。
長崎の、長崎の
人形つくりはおそろしや!
「こんな唄を知っていますか。白秋の詩ですよ。貴女を見ると、この詩を思い出すんです。」
風鈴が、そっと私の心をなぶった。
ヒヤヒヤとした縁端に足を投げ出していた私は、灯のそばにいざりよって男の胸に顔を寄せた。燃えるような息を聞いた。たくましい胸の激しい大波の中に、しばし私は石のように溺れていた。
切ない悲しさだ。女の業なのだ。私の動脈は噴水の様にしぶいた。
吉田さんは震えて沈黙っている。私は油絵の具の中にひそむ、あのエロチックな匂いを此時程嬉しく思った事はなかった。