Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 197.228 Zeichen · 394 Bildschirme
「承知いたした。忠次も、そう承れば、さだめし本望でござろう」
家康はひそかに忠次を呼んで、信長の意志を伝え、同時に、
「急ぎ打ち立てい」
と、命じた。
忠次の勇躍したことはいうまでもない。極秘のうちに隊備を果し、そっと信長にも目通りして、
「日暮と共に立ちまする」
と、だけ挨拶した。
「そうか」
と、信長もなにもいわなかった。しかし岐阜から連れて来た銃手五百人を分けて、それに金森長近、佐藤政秀の二将を附けて、
「忠次を扶け、いよいよ敵塁を踏み奪ったときは、直ちに烽火をあげて合図せよ」
と、いいつけた。
総勢三千余人となった。酒井忠次以下、本多広孝、康重、松平伊忠、奥平貞能などを始め、西郷、牧野、菅沼などの諸部隊一体に、夕べと共に陣所を離れた。
まったくの五月闇であった。師ヶ原から豊川筋へかかる頃から、ポツ、ポツと白い雨の縞が闇を斜めに切って来た。やがて、沛然たる大雨は、黙々とゆく三千の影を濡れ鼠にしていた。
松山越えにかかるため、一同は麓の寺院にかくれて、みな鎧を脱ぎ、馬を捨て、身軽になって背中へ負った。
ここはひどい嶮岨である。加うるに滝津瀬のような雨水と暗闇に辷っては攀じ、攀じてはまた辷る。