Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 197.228 Zeichen · 394 Bildschirme
「喉の矢瘡はどうした?」
と、呆れながらたずねると、
「好きな象戯をさしていると、痛みも忘れております。明日は、御陣所へ罷り出て、役目に就けるかと存じます」
と、坐住居を直して答えた。
「ばかを申せ、もっと寝ていなければいけない」
叱って帰って来たが、家康は内心、欣しかったらしい。あくる日、彼が首の根に布を巻いて、具足を着込み、まるで俵みたいな恰好して出て来たのを見ると、にやりと笑った。家康が満足なときに洩らす微笑であったという。
彼の象戯には、こういう履歴があるので、
(あれは、喉に穴があいても、役目を怠らない男だ。いわんや、象戯の好きぐらいに、心を囚われる気づかいはない)
と、主君から保証されたかたちになっていたのである。
今、その象戯盤を間において、又四郎は主君のお相手を命じられたが、駒をならべ合ったのみで、家康はいつまでも駒をうごかそうともしなかった。
「……いざ。どうぞ」
当然、自分のほうが強い。又四郎は、こう先手を促した。
「…………」
家康は眼をこらして、彼の顔をただ見ている。
主従ふたりが、どんな象戯をさしていたか、小姓も侍臣もいなかったので、知るものはない。