Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

何しても、信長公よりは、信行様のほうが、お可愛くてならぬお方じゃて」

「ふム……。然らば、御舎弟信行様にはもとより御決心か」

「佐渡や権六が起つならば、織田家のため、信長公へ弓をひいても、是非あるまいと」

「専ら、お許が説いたのでござろうが」

「それや何しても、相手が御母公やら、気の弱い信行様のこと。そう油をかけて力説せねば、動くはずもござらぬ」

「いや、おふた方さえ、承知とあれば、名分は充分にある。信長公の暗愚を憂い、お家の末を案じている家臣はわれらのみではない」

「尾張一国のため、織田家百年のため。――と、まず旗じるしはそれでよいが、軍備は」

「折もよし、那古屋へ移されたので、それも手早う進んだ。鼓を鳴らせば、いつなりと」

「そうか。……では」

権六が、一膝前に、身を揺り出した時だった。

ばらッ、と大地に何か音を立てて落ちた。

二ツ三ツの青梅の実。

雨は小やみであったが、雨以上のしずくが、風のたび廂を打つ。

――犬のような人影が、床下から這い出していた。今の梅の実は、梢から落ちたのでなく、その男が床下から頭だけ出して抛ったのである。

室内の眼が、それへ振り向いて、気を休めた隙に、忍びの者らしい男の影は、もう風と闇の中に紛れていた。