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Japanische Klassiker mit Furigana

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がくせいものがたり

楽聖物語

野村 あらえびす

Lesen Sie 楽聖物語 (がくせいものがたり) von 野村 あらえびす (のむらあらえびす) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.667 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

階下では妻と子が病気で呻吟しているが、近頃は薬餌の料も覚束ない有様であるのに、もしベルリオーズが金儲けの俗事を放擲して、交響曲の作曲に没頭したらどんなことになるだろう。一か月や二か月はその仕事のために一切の収入を失うことはわかりきっている。その上それを上演する熱望に駆られて管弦楽団を組織し、長い間の練習を重ねて、どうせ儲かるはずのない上演まで、驚くべき費用をどこからか捻出しなければならないだろう。

「今はそんなものに没頭している時ではない」、ベルリオーズは自分に言い聴かせて、床の中にもぐり込んでしまったのである。

翌る晩も、ベルリオーズは同じ夢を見た。耳には美しい主題が凛々と響く、――が、階下から聞える病妻と病児のうめき声が、またもベルリオーズの幻想を打ち破って、もう一度諦めの枕につかなければならなかった。

三晩目には、もうその夢は見なかった。そればかりでなく、後になっていくら骨を折っても、夢の中の交響曲の主題は、もうベルリオーズには蘇らなかったのである。ベルリオーズはせっかく天来の妙想を一つ失い、後世のわれわれは、ベルリオーズの人間味――弱い心のために、一つの美しい交響曲を文字通り闇から闇に失ってしまったのである。