Japanische Klassiker mit Furigana
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がくせいものがたり
楽聖物語
野村 あらえびす
Lesen Sie 楽聖物語 (がくせいものがたり) von 野村 あらえびす (のむらあらえびす) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.667 Zeichen · 381 Bildschirme
洪水は道を没して、サンドは靴を失ったうえ、乗って帰る馬車さえもなく、幾度か危険な目に逢いながら、命からがら帰り着いたのはもはや夜半であった。
留守をしていた病身のショパンは、サンドが溺死体となってその上へ水の滴りが執拗に落ち続ける幻想に悩まされ、眼に涙さえ浮かべながら、真っ蒼な顔をしてピアノを弾き続けていた。その時ショパンを因えた不安と恐怖が、傑作「雨滴れの前奏曲」になったのだと言われている。ショパンの幻想を誘った執拗な水滴の音は、住み古した家の天井に漏る雨滴れの音だったのである。
ショパンとサンドの交情も、さまで長くは続かなかった。正直一途のショパンが、正式結婚を求めたのに対して、年上で巧慧なサンドが承諾を与えなかったために、二人は回避することの出来ない破局に直面した。
ショパンの懊悩は見る目も無残であった。が、サンドが二度までもショパンの住居を訪ねたとき、ショパンは一言も口をきかず、臨終の際も、サンドの腕に抱かれて死ぬ望みに燃えながら敢然面会を謝絶してしまったほどショパンは一国者であった。サンドの態度はもとより非難さるべきであり、ショパンの死期を早めたのは、サンドの無情のためであると言われるが、一面リストの如きは、ショパンがあの蒲柳の質で、三十九歳まで生き延びたのは、サンドの看護と注意のおかげであっ