Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
一 それから
一 それから
母に死別してからの次郎の生活は、見ちがえるほどしっとりと落ちついていた。彼は、なるほど、はたから見ると淋しそうではあった。彼の眼の底に焼きつけられた母の顔が、何かにつけ、食卓や、壁や、黒板や、また時としては、空を飛ぶ雲のなかにさえあらわれて、ともすると、彼の気持を周囲の人たちから引きはなしがちだったのである。しかし、母が、臨終の数日まえに、
「あたしは、乳母やよりももっと遠いところから、きっと次郎を見ててあげるよ。だから、……だから、腹が立ったり、……悲しかったりしても……」
と息をとぎらせながら言った言葉が、いつも力強く彼の心を捉えていた。で、彼自身としては、彼が孤独に見える時ほど、かえって気持が落ちついていたとも言えるのだった。
彼は、正木のお祖母さんといっしょに、よくお墓詣りをした。お墓の前にしゃがむと、彼は拝むというよりは、じっと眼をすえて地の底を見透そうとするかのようであった。彼は、母の屍体が日ごとにくずれて行っているなどとは、微塵も思いたくなかった。彼が地下数間のところに想像するものは、いつも、ほのかな光のなかにうき出した大理石像のようなものだった。