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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はただ、自分が用心ぶかくなればなるはど、その眼に出っくわすことが多くなり、その眼に出っくわすことが多くなればなるほど、いよいよ用心ぶかくならないでは居れない気がするのだった。

「大人になった」という言葉が、自然彼の耳にじかに聞えて来ることも、決してまれではなかった。そんな時には、彼は、自分が、いかにもしっかりした人間になった、と言われたような気がして、心の底でいくぶんの誇りを感じた。しかし、同時に、何か淋しい気もした。また、ほめられて喜ぶ自分の心をあざけるような気持にもなろた。彼はそうした複雑な気持をかくすために、人々のまえで、つとめて平気を装うのだった。

こんなふうで、正木の家での彼は、表面取りたてて問題になるようなこともなかったが、それだけに、彼はいつも自己の天真をいつわり、彼自身をますます不愉快なものにしていたのである。尤も、彼がこうして自己嫌悪に似たものを感じていたとしても、それは、もともと彼の負けぎらいから来た人相手の感情でしかなく、その点では、彼はまだ何といっても子供であった。だから、正木の家で、「めっきり大人になった」ということは、必ずしも、彼が全く救いがたい人間になった、ということではなかったのである。