Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
それが最上の勝だ。そうなるとやはり慈悲心だね、一番強いのは。……とにかく刃物はいかんよ。相手のために危険であるというよりか君自身のために危険だ。なあに、自分がなぐられる覚悟をきめさえすれば何でもないよ。なぐられるたびに偉くなると思えば、なぐられるのがありがたいくらいなもんだ。」
先生の言っている言葉の意味は、次郎にもよくのみこめた。しかし、気持としては、まだどこかぴったりしないところがあった。彼はいくぶんためらいながら、たずねた。
「先生、剣道は何のためにやるんですか。」
「うむ――」
と、先生は、澄んだ眼で、じっと次郎の顔を見つめたあと、いかにも静かな調子で答えた。
「それは見事に死ぬためさ。」
次郎には、全く思いがけない答えだった。彼は驚いたように、先生を見た。
「むずかしいかな。」
と、先生は、ちょっと首をかしげて、微笑した。そして、しばらく考えていたが、
「山岡鉄舟という人は、非常な剣道の達人で、しかも幕末の血なまぐさい頃に仂いた人だが、一生、人を斬ったことのない人だそうだ。むろん戦場に出たら、そういうわけにも行かなかったろうさ。しかし、その機会もなかったらしい。