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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、休み時間になって、みんなが黒坂のそばに押しよせた時には、飛びこんでいってそれを引っぱがしたいような気にさえなった。

次郎にとっては、彼の記憶に残っている実際の母の顔と、墓詣りをするうちに描き出した母の顔とは、決してべつべつのものではなかった。彼自身では、母の顔を二様に思い浮かべているとは、ほとんど意識していなかったほど、まったく自然に、時に応じて、そのどちらかが彼の眼に浮かんで来たのである。彼が、彼なりに社会を持っている場合、つまり、学校や、家庭や、その外の場所で、周囲の人たちと何かの交渉がある場合に、自然に彼が思い出すのは、彼の記憶に残っている実際の母の顔であり、仏壇の前に坐ったり、墓詣りをしたり、夜中にふと眼をさましたりするときに、ひとりでに浮かんで来るのは、観音さまに似た母の顔だった。

もっとも、月日がたつにつれて、この二つの顔は、次郎のその時の気分しだいで、どちらになることもあった。そして、三四ヵ月もたったころには、彼は自分でも気づかないうちに、観音さまに似た顔ばかりを思い出すようになっていたのである。

彼は、乳母のお浜におりおり手紙を書くことを忘れなかった。