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Japanische Klassiker mit Furigana

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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme

Aozora Bunko

正造はやがて鉱毒問題に対する苦衷を語りだした。黒い毛繻子の袴に手をおいて、齢をいえば自分の半分にすぎぬ幸徳に対して、その態度は慇懃であった。幸徳はこのときまだ、ようやく三十一歳の青年であった。

やがて正造は深刻な顔になって、そわそわと梯子段の方を振りかえり、

「誰に聞かれても困る話だが……」

ひどく気づかわしげな様子を見せた。

「いや、御心配はいりません。下はもう寝ております」

正造は黙ってそれにうなずき返した。それでも猶おのずから声を低くして膝を乗りだし、幸徳の両眼に見入りながら語りだした。

「私は社会の大罪人だ。被害民を救うことはできず、かえって悪魔の巣を造ってしまった。日本を亡国にしてしまった。今はこの自分を厳罰に処する以外に途はない。ここに最後に残ったただ一つの途がある。それは即ちこの命を、この自分を、産みの親である国家へお返しすることだ。もともと命は、私のものでなく公のものだから当然のことだが……」

そういって、正造は一身を棄てる日が、明日に迫っていることを打ちあけた。肝胆を輸して思いここに到った至情が、満面に溢れていた。幸徳は一瞬に火影が色を変えたようにかんじ、懐にした片手で痩せた肋骨のあたりをつかむようにした。