Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
第六章
人目をさける微行であった。三国橋の舟橋を越えて海老瀬村のはずれまで来ると、そこに多数の被害民が出迎えていたが、総代の挨拶が終るや否や、早くも一人が日頃の不満をおさえきれない様子で、十八日の答弁書の内容を語りだした。すると後から難詰の言葉を投げる者が出て、榎本は囂々の声にとり囲まれた。津田も榎本の苦衷を知っているだけに、さすがにその立場を気の毒に思ったが、さりとて被害民の言い方も当然のことと思えば、さし止めるわけにもゆかず困惑した。
総代たちがようやく一同をなだめて、早速被害地の案内をすることになり、榎本の視察が微行であることを察して案内者もごく少数にとどめた。海老瀬村の激甚地から川添いに西谷田村に入り、神明西の破堤の跡へ出た。切れ先の附近はただ一面に灰色の沙漠になっていて、浸水の当時にできた沼が、未だそのまま無気味な水を湛えていた。青黒い顔をした老若が、畚をかついで来ては、その水のなかへ土をぶちまけていた。築堤の工事である。さらに枯れて芽立ちの気配もない桑畑や、青いものといえば僅かに杉菜をみるばかりの田畑の荒廃や、部落々々の廃屋や、疾病者の状態や、到るところで無残な事実を目撃しつつ、榎本は黙々と足を運んだ。