Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.044 Zeichen · 575 Bildschirme
十月四日(消印)
鍋井克之は一寸面白いひとです。皮肉も云うところがあって。安井というひとの顔を見て、ああこういう顔のひとがああいうのをかくかと面白うございました。画の中の人のとおりよ、面が多くて、黒い眉して、頬ぺたのよこのところが珍しく赤くて。面と色彩とが錯交していて。石井さんはぼってりで、そういうてがたい教師風の絵だし、鍋井という人は宇野浩二の本でもああいう線の細い淡いような、そこにつよさのあるような風だし。
私は、芸術家に還暦なんかある筈がないから若がえりのお祝だろうと思うということと、この画家が明治からのいろんな文化の波を反映して来たことの独自さを一寸話しました。門の木犀が咲きましたから、せめて匂いを、と思って、花を入れて封をするのよ。では又。
十月四日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十月三日 第六十七信
きのうあたりからしきりにそちらに行きたい心持がいたします。でも、それに抵抗するようにして机にねばって居ります。こんな気持、子供らしいような。けれども一週間てこんなに永いのでしょうか。随分奇妙ね。たった一つの、土曜日から次の月曜日までとお思いになれて? きょうは木曜よ。