Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひゃくしんのふ

百唇の譜

野村 胡堂

Lesen Sie 百唇の譜 (ひゃくしんのふ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.209 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

美しき尼の行方

お梅は千代之助の胸に顔を埋めて、シクシクと泣き出してしまいました。

「それは皆んな世上の噂だよ。私に構って貰えない世上の女達が、勝手な事を言いふらして、腹癒せをして居るのだよ。私はお前の外に、女を持った事が無いとは言わない――けれども女という者を知ってから、まだお梅姐さんのような女に逢ったことは一度もない、どうしてどうしてこの大事な女を、人の手に渡してなるものか――」

「お前それは本当かい」

「本当にも嘘にも、私の胸は、それ、早鐘を打って、私の頬はこんなに燃えて居るじゃないか」

「嬉しいよ、私は。その言葉を、何時までも何時までもお忘れでない」

「何んの」

二人は犇と抱き合いました。

一方の窓の外は池の端の人通り、夕暮を急ぐ人達の足音をうつつに聞いて、二人は時の経つのも忘れて居ります。

美しき尼の行方

一足先に池の端の往来に出た千代之助は、お梅のことなどもうケロリと忘れて居りました。熟れ切った年増女の執拗な恋は、何んとなく倦怠を覚えさせないではありませんが、夕暮の池の風が――蓮の花の香ばしさを載せて顔を吹くと、そんな疲れも吹き飛んで仕舞います。

「おや」

千代之助はフト立ち止りました。