Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ひゃくしんのふ

百唇の譜

野村 胡堂

Lesen Sie 百唇の譜 (ひゃくしんのふ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.209 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

九十九人目

千代之助は猟犬の姿を見た野兎のように、踵を返すと一目散に蜘蛛手の路次に、その馬鹿馬鹿しく派手な姿を隠して了いました。

賢いのか、寛大なのか、家祿が惜しいのか、それとも真弓の思惑を憚るのか、良平のこの態度ばかりは、口善悪ない供の者にも、全く推し測りようは無かったのです。

九十九人目

その頃千代之助は、悪魔とも、餓鬼とも、言いようのない惨憺たる堕落振りでした。

或時は、兎口の守っ子に変な様子を見せて町内の鳶の者に尻を持ち込まれたり、或時は名の通った博奕打の囲い者と逢引して牛死半生の目に逢わされたりしました。

千代之助の淫蕩な生活は、そんなことで少しも懲りた様子はありません。唇から唇へと漁り歩く浅ましい姿は、さすがにそんな事には馴れ切っている筈の芝居者も、眼を聳てたり、後ろ指を差したりする有様だったのです。

夏の暑い日、蓮の花の上に突き出した池の端の出逢い茶屋の奥に、千代之助はその何十人目かの女と、恋の果しもない遊戯に耽って居りました。

「ちょいと、お前さんは、もうこの私に嫌気がさしたんじゃないの」

「どうしてそんな事があるものか」

二枚目役者の千代之助は、青々として野郎頭ですが、薄化粧位はして居るらしく、上布の帷子の上に、帰り支度らしく紗の短かい羽織を引っ掛けて居るところでした。