Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひゃくしんのふ

百唇の譜

野村 胡堂

Lesen Sie 百唇の譜 (ひゃくしんのふ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.209 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

仏の前に破戒の誘い

帷子に紗を羽織って、薄化粧さえした優姿を見ると、さすがに一度は驚いたようでしたが、警戒する程の物凄い相手で無いと見たのか、そのまま招き入れる形ちに席を開きます。

「これは辱けない、御造作にあずかります」

そう言う千代之助は、もう庵室の中に上り込んで居りました。

相手が女でさえあれば、どんな事をしても、とがめられた事の無い千代之助はこんな時だけは、本当に素晴らしい勇者だったのです。

仏の前に破戒の誘い

「何んと言う静かなことでしょう」

「…………」

「お淋しくはありませんか」

「は、いいえ」

「御修業はさること乍ら、若くて美しいお方が、斯う行い浄めて居られるのは、深い仔細が無くては叶いません。御差支が無かったらお話し下さい――」

「いえ、もう」

若い尼は、顔を赤らめて俯向くばかりでした。しなやかな肉付や、美しい肢体は、墨染の法衣にも隠せず、庵室の貧しさにも輝やき渡るばかりでした。

「世を捨てられるまでには、いろいろの御物語もあることで御座いましょう。例えば恋とか――情けとか」

「いえいえそんなものは御座いません。私のは世を捨てたのではなくて、世に捨てられた身の上で御座います」