Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
――宰相ノ中将顕家、陵王の入綾を、いみじう尽して罷づるを、召返して、前ノ関白殿、御衣とりてかづけ給ふ。
紅梅の上は着、二あゐの衣なり。左の肩にかけて、いささか一曲舞ひて罷かン出ぬ。右の大臣、太鼓打ち給ふ……
「ああ、夢よ」
顕家は目醒めた。
しかし、太鼓は夢でない。何が起ったのか。とうとうと麓で陣太鼓が鳴っている。
あの君、この公卿。夢の中の人にしてなお今日も生きている人が何人あるだろうか。顕家の瞼には、一瞬、儚い花びらが、水の上の花屑のように流れ去ッた。
「やっ? 敵の襲来か」
あたりは急に騒然とし、坂本、唐崎の遠くにまで、潮のようなどよめきや飛ぶ火が見えた。
夜すがらな山下のあらしは、明けてみれば、それも味方の吉事とわかった。
洛内のすみに追いこまれていた新田義貞の手が、敵中突破に成功して、やっと東坂本へたどり着いて来たものだった。
また。宇治の手の楠木も、千種、脇屋、名和などもそれいぜんにみな行宮の守りに返っており――これに奥州軍の来援もみたこの朝の官軍は、まったく生色を新たに、
「いまは時措くべきでない。われから攻勢に転じ、まず三井寺の賊軍を殲滅して後、尊氏、直義を洛中に囲み、このたびこそは、その首級をあげねばならん」