Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「…………」
「いやいや、言い違えた。貴相ではあるが、その貴相は、福禄のそれではなく、堂上におごる人のそれともちがう。どうみても我利我欲の強さには欠けている。では私の自我心はないのか。それもちがう。おそろしい大自我、いわば大私といったような御自分の自信はなんぴとよりもお強く巌みたいにその貌心の奥に深く秘めてはおられる」
「…………」
「これは稀有なお顔じゃわい。たまたま人間の中に生れた一個のめずらなおひとがここの御領主であったわえと、つい、仮面作りの根性から、そのせつ、見惚れ申したことでおざりまいた。……だが、ただひとつ、どうにも気がかりなことがありますわい」
「気がかりと仰っしゃるのは」
「申すまい。……いや、あなたさまだけには、そっと申しあげておいたがよいか?」
「なにをです。赤鶴さま、聞かせてください」
「てまえは人相観でおざりませぬゆえ、中らぬかもしれず、中らぬことを祈ってはおれど、御領主さまのどこかには、可惜、死相の翳がみえまするで……」
「まッ、不吉な!」
卯木はおもわず小さい叫びに似た声で。
「おやかた様に死相の翳がみえるなんて……。そ、そんなこと、思うだに、いまわしい! 赤鶴さまえ! 予言者でもないそなたに、何でそのようなことが、言い断れるのですか。