Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
……眺めをさかなに、ひとつ酌もう」
「まことに。涼夜の一杯は、生けるしるしありとか言いますな。心ゆくまでいただきましょう」
「そして、あすの夜は、尊氏兄弟の首をさかなに、さらに祝杯をあげたいものだが」
「はははは。おなじことを、こよい尊氏の船中でも、直義の陣中でも、申し合うていることでしょう」
「直義は暴勇のみ。尊氏は政略だけの男。いずれも恐るるには足らん。ただ兵数だけが、われよりはるかに超えておる。それにたいする河内どのの戦法はどうか。よい奇略があるなら聞きたいものだが」
正成は、顔を振った。
「なんで正成にかくべつな奇略などありましょう。ただあすは御指揮のもとに全力をつくすほか何も所存してはおりませぬ」
しかし、義貞は、それを彼のひかえめな言い廻しとみて。
「おたがい遠慮はよそう。忌憚のないところが聞きたい。義貞もいう。そして最善の作戦を練らねばならん」
「守勢のお味方に、しかと御用意のできるのは“応変”のみです」
「つまり布陣か。応変自在の」
「は」
「すでに、あらましの配備は、ひるのうち諸陣へ申しわたしてある」
「その、ご意中の図は」
「ま。……こうだ」
と、義貞は床に扇のさきで曲線を描いてみせた。