Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

と、いいおいて立去った。

母子はとうに部屋の簾を垂れて、その声にも姿をみせず、また返辞の要もないので、去り行く足音だけを黙って聞いていたのであった。

――ふと、こんな小夜のあらしは過ぎたものの、覚一は何か索然としたここちで、もう琵琶を取りあげる気にもなれないでいた。

「……お母あさん」

「なあに」

「まだお手紙のつづきを書いていらっしゃるのですか」

「もう終りました、やっと」

「ずいぶん長くかかっていらっしゃいましたね。鎌倉の伯母(高氏の母、草心尼の姉)さまへですか」

「いいえ」

「では……。ああわかった」

「あててごらん」

「三河の一色村にいるお方でしょう。あの、藤夜叉と仰っしゃるおひとへ書いたんではありませんか」

「そうですの。よくわかるのね、そんなことまで」

「だって、この春その藤夜叉さんから大そう長い長いお便りがあったのに、ご返事も書けずにいると、日ごろお母あさんも苦にしていたではありませぬか」

「そう。やっとそれをこん夜書いたのだけど、文字というものは、不便なものね」

「けれど恋歌などは、わずかな字かずで、どんな思いも思う人につたえるではありませんか」

「ま。この子が」