Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
すみません」
と、何故、率直に、いえないのか。
吉田は――自分の知らぬことだが、子分のしたことなら、自分が謝る、すまぬ、といって、一介の沖仲仕の前に、頭を下げたではないか。金五郎は、昨夜から作りあげていた、勝手な吉田磯吉とは、別個の吉田磯吉に、威圧を感じた。
谷口マンのことをいうつもりだったのに、それどころではなかった。いわなくて、よかった。懐中ランプなどを、吉田磯吉が子分を使って取りあげさせる筈がない。
金五郎は、足が重くなった。次第に、あたりが黄昏れて、暗くなるような、奇妙な不安感に包まれて、唇をかみかみ、歩いた。
(龍になって、昇天するなど、おこの沙汰じゃ。あべこべに、地に潜らねばならん)
涙のにじむ思いで、自分を叱りとばした。
飯代部屋に、帰って来た。
誰もいない。がらんとしている。さっき、新之助の遭難をきいて飛びだしたとき、蹴ちらした将棋の駒が、散乱したままになっている。
金五郎は、そこに、坐ると、静かに、将棋の駒を拾いあつめた。飛車を手に取り、裏返して、龍の字を眺め、将棋盤の中央に、心をすますようにして、パチッと、打った。
金五郎は、部屋の隅にある柳行李を引きよせた。