Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
夫婦
馬鹿々々しくてならなかった。
その金五郎の眼に、すぐ横にいる谷口マンの姿が映った。
マンは、麻の煙草入れから、キザミをとりだし、短い煙管で、煙草を吸っている。マッチで、雁首に火をつける。吸口を唇にはさんで、軽く吸うと、ポウッと、火が大きく明かるくなる。すこし胸を張り、フウッ、と、煙をはきだす。いかにも、おいしそうである。
金五郎は、珍しい気持で、
「おマンさん」と、呼びかけた。
「はい」
「あんた、煙草のみじゃな?」
その言葉に、マンは、ふいに、赤らんだ。
「わたしに、一服」
金五郎にそういわれて、マンは煙管と煙草入れとを、黙ってさしだした。
なれぬ手つきで、キザミをつめ、火をつけて、一口吸った金五郎は、はげしく、せきこんだ。その眼に、真紅の太陽が、くるくると、廻転した。咳が、脳天の傷にこたえる。涙が出た。
夫婦
真昼間なのに、長屋は、ひっそり閑と、静かだ。今日は、仕事は休みだが、どの家にも、誰もいない。鶏が、二三羽、餌をつついている。
長屋の中央にある井戸端で、かんかんと照りつける秋の陽を浴びながら、マンと、兄林助の女房チヱとが、二人、話をしている。
インド丸荷役の勝利は、浜尾市造をすこぶる満足させた。