Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
その言葉に、船の中に、明かるい笑い声が起った。喧嘩をしなくてもすんだ、という安堵感が、仲仕たちの憂鬱と緊張とを、解いていた。
「おい、タカさん、おれに、五十銭、奮発せえ。金さんを取りもってやるぞ」
艫の方で、からかう者があって、げらげらと、また、笑いが流れた。
マンひとりだけが、この笑いに同調せず、インド丸の甲板に立っている金五郎の姿を、またたきもせず、凝視している。
巨大な暗黒の中に、カンテラの光で浮き出ている金五郎の半纏姿は、マンの眼に、なにか、神々しいものさえ感じさせて、映った。いっぱいに瞠られた眼球に、潮風がしみて痛くなり、やっと、マンは、一つ、瞬きをした。
二千二百トンのインド丸の舷側に、石炭を満載した八十トン艀がつながれている。伝馬船をその艀に漕ぎよせると、仲仕たちは、ばらばらッと、飛びあがった。
「玉井、おおきに」
巨漢の助役は、艀の舷に立って、下から、インド丸の甲板に、声をかけた。
「ボーシン、そんなこた、どうでもええです。すぐ、持場について下さい。まだ、大村組は、棚を吊りよるところです」
「よし来た。……みんな、すぐ、かかれ」
仲仕たちは、敏捷に、あらかじめ定められた自分の部署についた。