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Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

不安というより、戦慄をともなうような恐怖といった方が近かった。

(審判のときを待とう)

考えてみても、そのときまでは、どうなることでもない。

夜になって、金五郎は、一人で、弁財天浜に出た。岸壁につないである玉井組の小伝馬船に乗った。

灯の明かるい聯合組の事務所から、長身の新谷勝太郎が出て来た。

「オヤジ。網打ちですか?」

「うん」

「英雄、閑日月あり――ちゅうところですな。今夜は、一人?」

「うん」

漕ぎだした。

中ノ島の横を抜け、ぐんぐんと、港外へ出て行った。闇夜である。切戸の燈台が見えて来た。

(玉井金五郎の馬鹿野郎)

胸壁を破るほどに、胸中にうずまいているはげしい自嘲の念が、金五郎を絶望的にする。

(なっちょらん。貴様は、駄目じゃ。――大馬鹿、阿呆、抜作、唐変木、兵六玉、低能……)

あらゆる言葉で、自分を罵倒した。

(三十年近くを苦しみ抜いて来て、最後が、こんなことか)

泣きべそをかいている金五郎の顔に、潮をふくんだ夜風があたる。手がしびれるようであったが、なにかから脱出するように、金五郎は、切迫した思いで、腕のかぎり、櫓を押していた。切戸を廻ると、波が荒くなって来た。