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Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

亭主を見殺しにして、知らん顔しとるなんて……」

林助は、ばりばりと歯を鳴らしたが、その眼から、ポロリ、ポロリと、太い涙があふれ落ちた。それから、がっくりとなって、痩せた顔を、すとんと枕から落した。虫の息である。

マンは、昏迷した。疑念と、狼狽とが、急に、マンを不安にした。

(どうしたら、よいのか?)

いろいろ苦労はしたつもりであったのに、こういう凄惨な人間の土壇場に、立ちあったことは、はじめてであった。強い心で割り切っていたのに、今、不可解な人間の魂の呻き声が、マンの人生観と、生活の規律とをゆるがせる。生命をも超えたものの声が、若いマンの胸をかきみだす。

連日連夜、夫婦喧嘩ばかりをくりかえしている林助とチヱ、そして、家庭内では、一種の暴君である兄が、死の床で、ただ、妻の名ばかり呼んでいる。病気を感染させてはならないという一心で、義姉を隔離したのに、マンを、鬼呼ばわりした。気が弱く、どこか、妹に気兼ねしていた兄としては、心底からの、最後の言葉であったかも知れない。

マンは、立ちあがった。

「兄さん」

呼んだが、返事がなかった。

胸のうえに、耳をつけてみた。