Japanische Klassiker mit Furigana
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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
Lesen Sie 英本土上陸戦の前夜 (えいほんどじょうりくせんのぜんや) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.727 Zeichen · 72 Bildschirme
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英蘭西岸の名港リバプールの北郊に、ブルートという町がある。
このブルートには、監獄があった。
或朝、この監獄の表門が、ぎしぎしと左右に開かれ、中から頭に包帯した一人の東洋人らしい男が送り出された。
彼に随いて、この門まで足を運んだ背の高い看守が、釈放囚の肩をぽんと叩き、
「じゃあミスター・F。気をつけていくがいい。娑婆じゃ、いくら空襲警報が鳴ろうと、これまでのように、君を地下防空室へ連れこんでくれるわしのような世話役はついていないのだからよく考えて、自分の躯をまもることだ」
「……」
「おう、それから、君の元首蒋将軍に逢ったら、わしがよろしくいったと伝えてくれ。じゃあ、気をつけていくがいい」
「……」
ミスター・Fと呼ばれたその釈放囚は、新聞紙にくるんだ小さい包を小脇にかかえて、無言のままで、門を出ていった。
それからは、やけに速足になって、監獄通りの舗道を、百ヤードほども、息せききって歩いていったが、そこで、なんと思ったか、急に足を停め、くるりと後をふりかえった。
彼の、どんよりした眼は、今しも出てきた厳しい監獄の大鉄門のうえに、しばし釘づけになった。