Japanische Klassiker mit Furigana
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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
Lesen Sie 英本土上陸戦の前夜 (えいほんどじょうりくせんのぜんや) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.727 Zeichen · 72 Bildschirme
5
「胸だ、胸だ。シャツを裂け」
「こっちへ寄せろ。電灯の方へ……」
胸を真赤に染めた男の顔が、電灯の光に、ぱっと照らし出された。その男は、紙のように、真白な顔色をしていて、目が引きつっていた。よく見ると、それは、さっき、アンを咎めた私服警官であった。
「あなた、逃げましょう」
「えっ」
「綱を切ってよ。ナイフは、ここにあるわ」
「よし、こっちへ貸せ」
どこから出したものか、アンの手にはジャック・ナイフがあった。仏天青は、刃を出すと、ぷすっと綱を切った。
「ああ、助かった。さあ、逃げるのです」
「アン、どこへいく。あ、今、外へいっちゃ、危い。入口でやられた人があるじゃないか」
「いいのよ。こうなれば、どこにいても同じことよ。さあ一緒に逃げてよ」
アンは、ぐいぐいと仏天青の手を引張った。
「危い。もうすこしの間、待て」
「いいえ、待てないわ。じゃ、あたしひとりでいきますわ」
アンは、入口の方へ上っていった。
「おい、アン、待て。おれも出る」
仏は、そういうと、中国服の裾を摘んで、アンの後を追った。
5
防空壕を飛び出してみると、外は、今爆撃の真最中だった。
頭上には、ドイツ機が、縦横に飛んでいた。