Japanische Klassiker mit Furigana
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
Lesen Sie 魔術師 (まじゅつし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.264 Zeichen · 280 Bildschirme
文代の方でも明智を慕っている気持は、品川沖の怪汽艇での出来事以来、分り過ぎる程分っている。
何と云う不思議な因縁であろう。名探偵は敵と狙う賊の娘を恋している。娘の方では、真実の父親を裏切ってまで、明智に好意を示そうと、いたましくも悶えている。
「フフフ……、貴様は何という馬鹿者だろう。相手は殺人鬼の娘だ。出来ない相談だ。そんな妄想は綺麗さっぱり、西の海へ吹飛してしまえ」
明智はフィガロの紫色の煙の中で、苦々しげに呟いた。
と、丁度その時、何かの暗合の様に、隣の客間のドアに、ホトホトとノックの音が聞えた。
十一時過ぎの来客だ。少しも当てがない。誰だろうと思いながら、物憂く立って行って、ドアを開いた。
廊下にションボリ佇んでいたのは、外套の毛皮の襟で顔を隠した、洋装の女であった。
「お間違いではありませんか。僕は明智というものですが」
明智は予期せぬ来客に面喰って尋ねた。
「イイエ」
女は毛皮の下から幽かに答える。
「では僕をお訪ねになったのですか。あなたはどなたです」
女はやや暫くためらっていたが、やがて決心した様に、
「どうか、お部屋へ入れて下さいまし。誰かに見つかるといけません」