Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
芍薬の駕
「嘘や人違いではあるまいな」と駄目を押した。
「たしかに、弦之丞でございました」
「して、それから、いかがいたした」
「さあ、その後に、また大変なことがあるんでございますが……アアいけねえ、なにしろ旦那、腹が空きぬいているもんですから、胃袋がクウクウ泣いて、もう、これ以上は、お話ができません」
「意気地のないことをいうな……どうした、それから」
「駄目です、ああ、もう一口ものをいっても目が廻りそうだ」
「しようのない奴じゃ」と、一角も、ぜひなく引っつかんでいた襟がみを離して、周囲の者を見廻しながら、
「誰か、何ぞ、こいつにくれる、食い物をお持ちあわせはないか」
と訊ねると、原士の中のひとりが、
「短銃の火薬は用意してまいったが、あいにくと、食い物の用意はござらん」
と答えた。
みんなは笑ったが、宅助の胃袋は涙をながした。
芍薬の駕
源内の誰に縫わせし袷かな
その晩、真言坂の上の、俳諧師荷亭の宅では運座があった。
高津の宮の森が見える閑素な八畳間に、四、五人の客が、ささやかな集まりをして、めいめいが筆墨を前にし、しずかに句を作っていた。
みんな、口もきかずに、苦吟している。