Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「まだ、息が、ございますか」
「ない!」
「じゃあ、もう駄目なんで?」
「そうともいえない」
「水を掬ってきて、呑ませましょうか」
「とんでもないこッた」
「腰ですか、斬られているのは」
「一番の深傷はここだ。けれど、この深傷は大したことにはなるまい」
袂落しという懐中袋から、針を出して、返辞をしながらグングンと傷口を縫って行った。
長崎じこみの技だけあって、そのテキパキとした始末と早さには見ている者が感嘆させられる。源内はわき目もふらずに、次に、万吉の顔の血を押し拭った。
満顔朱に見えたところから推して、顔面のどこかを斬られているなと思えたが、そこには太刀傷がなくて肩先の返り血だった。
そこを縫いにかかると、源内が自信のある声で、
「こりゃ、助かる!」
といいきった。
黙蛙堂はホッとして、自分が宙を飛んで源内を呼び戻してきたことが、徒労でなかったのをよろこんだ。
黙蛙堂の家は、川向うの近くなので、すぐに、万吉はそこへ運ばれた。そして、源内の懸命な手当ても、夜ッぴて、離れることがなかった。
明方に近づいた頃、かれは、かすかに意識づいた万吉の容態を見ると、もう大丈夫と見きわめをつけて、夜来の疲れもいとわずに、ゆうべの駕で、九条村へ、薬を取りに帰って行った。