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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

周馬と一角をのこして、宅助の様子を見届けに来たのだが、まさか、入墨のすっぱだかで飛んでくる男が、今、眼鏡の中に見えた宅助だとは思わない。

倶利迦羅紋々のいさぎよい逃げぶりを見送って、弦之丞は苦笑いしていた。

その編笠を、しずかにふりかえらせて、

「お女中、どこも、怪我はなかったかの?」

と、後ろを見ると、四、五人の蚊帳売りが荷を担って、目の前をさえぎったので、少し離れて、その通りぬけるのを待っている。

お米は少し後ろへ戻って、その行商人たちの足にふまれて行った、自分のはきものや日傘をさがして、前の辻堂の縁のそばへ、後ろ向きにしゃがんでいた。そして、髪や襟元をつくろいなおしている様子なので、弦之丞は、あえて意にとめるところなく、そのまま森の片日蔭を辿って、ピタピタと先へ歩みはじめた。

かれはもう今のことなどは忘れて、

「万吉はどうしたのか? どうして姿が見えなくなったか?」

と、ただ、そればかりを思っている。

まさか、かれにかぎって、大志を曲げて変心するようなことはあるまい。

人は労苦をともにして、はじめて本心のよく分るもの、まだ彼と知ることの日は浅いが、義にも情にも、そんな軽浮でないことはよく分っている。