Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「して、船の出る日は?」
「十九日の晩の五ツ刻に、木津の河岸から安治川へ。その夕方に、四国屋の裏まで、身装を変えて来てくれたら、あとはお久良様がよいように手筈をしようとおっしゃいます」
「ウム、そうすると……」と指を繰ってみながら、「あと残る日もわずか四、五日」
「万吉さんはどうしたのでしょう」
「さ、その消息だが……」と声を低めて、話し話し歩いている間に、いつか弦之丞はお綱の歩みに連れていた。
お米はぽつねんと取り残された形。
どんな甘いささやきを交わしてゆくのかと、邪推されて胸は穏やかでない。
ちょうど、夢みている楽しい枕を不意にはずされてしまったような、腹立たしさ、さびしさ、空虚さ。
「ひと、ばかにしている」
睨むように、お綱のうしろ姿を見ていたが、やがて自分もあゆみだして、
「弦之丞様、弦之丞様」
と呼びとめた。
そして、ふたりがふりかえると、呼んだ者は埒外において、お綱の目とお米の目とが剃刀のように澄み合った。
「なにか御用?」
とお綱の声が冷たくいう。
「いいえ、お前さんじゃないんですの」
「おや、たいそうなご挨拶だよ。弦之丞様、いったいこの女はどこのお方?」