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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「客が?」

といぶかしみながら、弦之丞、腑に落ちない様子で、

「はて、誰であろうか」

梯子口から見あげていると、その間に、お米は上がり框の日和下駄を見て、少し顔色を変えたが、

「私は、そのうちにまた、あの、船が出るまでの間に出なおしてくることにしますから……」

と、意地でも側を離れそうもなく、ここまでついてきたお米が、ふいと、どこへか帰ってしまったので、弦之丞もお綱も少し案外だったが、そのまま小急ぎに梯子段を上がってみると、櫛巻に結って年増の女が、何か、物思わしげに、しょんぼりとうつむいている。

万吉の女房であった。

お吉は今朝、平賀源内の使いにおどろかされて、初めて、良人の凶変を知った。

で、取るものも取りあえず、小橋村の彫刻師の家に寝かされている万吉の容体を見に行ったのであるが、かすかに意識づいてきた万吉が、しきりと気にかけてやまないので、かれの口から船宿の所をきき、ようよう尋ね当ててきたわけであるという。

「さては」

聞きつつも、弦之丞、無念そうに唇を噛みしめた。

「やはり、案じていたに違わず、お十夜や天堂の詭策に陥ちたのであるか。ウウム……」と、暗涙をのんで愁然とした独りごと――「傷はとにかく、あの男の気性として、ここまで来ながら落伍しては、さだめし、それが無念にたえまい。