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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

と、侍はまた、編笠の目堰から水明りにお久良の姿をすかして、

「や! もしやそちは」

ツカツカと歩み寄ってきて、不気味なほどジッと顔を見ていたが、

「もとわしの屋敷におった久良ではないか」といった。

「エッ、そうおっしゃいますと、あなた様は?」

「見忘れておるのももっとも、もう十年も以前に、そちや多くの召使に暇をつかわした頃から浪人いたしておる元天満与力の常木鴻山じゃ」

「まア……」とお久良はよろめくばかりあきれた。

自分が恐ろしい危険を予覚しながら、弦之丞とお綱に尽くしたのも、その人が以前の恩主である常木鴻山と同じ目的をもっているのを知ったからである。ことにお久良は江戸に生い立っていて、二十歳ごろまで常木家に小間使となっていた。そして鴻山が浪人した後、縁があって阿波の四国屋へ嫁いでいたもので、そうした人の知らない好意が胸につつまれていたものだった。

だが、江戸に残っていた鴻山が、どうして不意にここへ来たのだろうか? それにもいろいろな事情があるが、要は道者船取止の沙汰をはるかにきいて、弦之丞の多難を知り、松平左京之介と計って、別な方策の打合せに急いで来たので、連れている姉弟の子供は、すなわちお三輪と乙吉であった。