Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「エ、なかなかよく使いこんである鑿です」
「売るつもりなら部屋の者に見せてあげるぜ」
「なに、これは、手放すわけにはゆかない品なんで」
と、眼八、のみの平首に拇指を当てて、ピカリと、ひとつ引っくり返した。
「これや、私が徳島の城下はずれで、フイと拾った物なんです。落し主は、こちらの半纏をきている若い棟梁、うしろから声をかけましたが、ツイ見失って、そのまま、いつかついでがあったらと、振分の中へまるめ込んでおきましたが、ここに……」と、鑿を眼のそばへ寄せて――「源という字が片彫してあるが、こちらのお職人で、そういう頭字のつく人がおりましょうかね」
「源? ……じゃア源次のことかもしれない」
「じかにお渡しいたしたいと思いますが、ちょっと、耳へ入れて上げてくれませんか」
「いいとも、じゃア今ここへ連れてくるから」
と、大勘の中年者は、膳を掌へのせて母屋のほうへ戻った。
眼八は拇指の腹であご髯をコスリながら、畳へおいた平鑿を見つめておった。
何かのクサビになるだろうと、この間、研師大黒宗理の店さきで、そこにいた職人の道具箱からソッと一本かすめておいた品物だ。
「この鑿を持っている源次という職人を取ッちめてみれば、大黒宗理のところから受け取って行った刀を、どこへ届けたか分ってくる。