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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

生れた時から悲恋の宿命をもっている恋。咲かない土に芽生えた花、それが、自分の恋ではなかろうか。

普通の境遇の人なら、なんでもない、実父の顔をひと目見るということが、生涯最大な希望になるほど不幸せな身には、恋にも、同じような恵まれない宿命をもっていた。

剣山へ行くまでの――この苦難の途中だけが、わずかに楽しい恋の時間だ。自分の恋のゆるされる道のりだ。そしてその恋も、あるものを超えてはならない恋。

はかない!

こんなはかない恋があろうか。

父の世阿弥に逢うという、希望の彼岸に立った時は、恋人を、義理のあるお千絵様に返さねばならない時だ。

剣山のいただきは、お綱に最大な希望と最大な失望の二ツをもって待っている。人生の悲喜明暗ふたいろの雲がそこにはたなびいている。

弦之丞は沈黙をまもり、お綱は眠りを装って、思い悩む。

「ああ、もっとあの山が、遠ければいい……」剣山にいたることが遠ければ遠いほど、お綱の恋はこのままでいられる。よしやそこに、あるものを超えるまでの強い力が結ばれなくても、ふたりの世界、楽しい旅が、お綱にはある。道が嶮しければ嶮しいほど、夜が暗ければ暗いほど、お綱の旅は人知れず楽しい。