Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
と古い記憶をよび起こした。
「いかにも、わしは使いに出されていた、吉野川を越えて向う地へ」
「その間に……」とお十夜はゴックと唾を飲む音を重苦しくさせて、「おれのおふくろは息を引き取ったのだ」
「世間の者は、不審とも気づかなかったろうが、わしには読めた。なみの下男なら知らぬこと、かりにも大内府直遣の隠密、しかも棲み込んでいる家の中の出来事だ。その夜以来、孫兵衛、いつのまにかお前のその十夜頭巾が脱れないものになっていたな」
「おう、ではあの時、使いに出て行った後のことを?」
「いかにも、残らず見届けていた。お前の母が危篤というと、すぐに七人の肉親ばかりが集まった。そこは例の厨子のある仏間、出入りに錠をおろしあたりを見張り、そして、静かにお前の母の枕元をとり巻いた。……と、あの柱だな。切り嵌めにして妙なものを埋め込んであるあの柱だ。それより前に、わしが畳を敷き代えた日に、埋木の口が落ちた途端には、何か、燦然としたものを見たが、お前の母親が茶の間から飛んできて、妙にあわてて隠したものだ。その柱へ、臨終にのぞんでいるお前の病母は、枕へ頭をのせたまま、弱い眸を向けたようだ。