Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
抜き打ちにくるか、突いてくるか? 老人はちょッとそんな興味を感じていたが、すぐにまた一歩前へ出て、
「弦之丞、腰をおろせ」
と不意にいった。
錆のある老声だが、ヒッソリした大気にひびいて、いかにも雷喝したようだった。
そしてすぐに、先で安心するように、自分から岩の上へ、ゆったりと腰をすえてみせた。
しかし、弦之丞は立っていた。
カチ、カチ、と燧鎌を磨って、首をかがめこんでいた老人の耳の裏から、香りのある煙がゆるく這った。
「ちと、話がある」
吸いつけたその煙草を斜めに持って――
「若者、まずそれへ、腰をおろしてはどうか」
と木の根を指した。
弦之丞は不審にたえぬように、
「何者?」
と見つめている風であった。
しかし、血に狂しているだろうなどといった周馬や孫兵衛の臆測はあたっていない。
老人の目にも案外なくらい、そこに立った弦之丞は冷静であった。むしろ、常のかれよりは沈鬱な影さえ持っていて、みじん、心のさし迫っている様子はなかった。
――あれから、日没頃のひどい霧がはれて夜に入った後。
かれとお綱とは、前の洞窟で落ちあっていた。
弦之丞はかの女の無事をまずよろこんだ。