Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「もうしばらく……もうしばらく」
と、一時きざみに、弥惣兵衛や捕手の影へ向って、はかない猶予を頼むのであった。
その、切なげな万吉の立場は、お綱の心に映っている。
で――覚悟をきめたらしく、ほつれ髪を指で梳いて、
「それでは、皆さま」
と、声を澄ませた。
一涙の痕もみせず、泣いていない顔は、ただ白かった。仮面のように、うごかない表情の白さだった。
「とうとう時節がまいりました、おそろしい程間違いなく、旧悪の埋合せを取りに来ました。けれど、見返りお綱の兇状を、いっそ、牢舎で洗われてくることは、先が楽しみのような気がいたします。で……皆さま、そういうわけで、私だけは、ここからひと足お先にお別れ申さなければなりませぬ。……永い間、ずいぶんお世話になりました。さようならば、ご機嫌に……法月弦之丞様、お千絵様、常木様、万吉様」
ひとりひとりへ会釈をして、梳であげる鬢の毛に肱を白く、ツイと立ったかと思うと、その痛ましい足どりの影へ――
「ア……お綱さま」と、お千絵が悲しげな声を風にかすらせる。
「おお、お綱、待て」
と、弦之丞も、剣をとる時の彼とは別人のように、みだれた音を重ね呼びに、