Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「だが、もう晩春、苫を垂れこめては、むし暑かろう」
「そうですねえ」
後を次ぐ言葉を考えながら、いつか、つぎ穂を失いかけて、また胸苦しい沈黙がつづきそうになる。
「あ、今のは」
「何かの?」
「時鳥ではありませんでしたか」
「あれは五位鷺」
「まあ」
「えらい違いじゃ。は、は、は、は」
また話の緒口を失って、お綱は顔へ血を上せた。
またしばらく、手持ちぶさたに、もじもじしていると、
「お綱、今のうちに、髪をなおしてくれぬか」
と、弦之丞のほうから渡りに舟の頼みが出る。
普化の宗衣を着ていれば、髪も切下げでなければならぬが、黒紬の素袷を着流して、髪だけがそのままでは、なんとなく気がさすし、そこらをウロついている原士の眼を避ける上にも、容を変えたほうがよかろうと、昨日も話していたことである。
「つい忘れておりました。では、ちょっと梳きなおして差上げましょう」
「どうか、願いたい」
「おやすいことでございます」
と、自分の黄楊の櫛を抜いて、弦之丞の側へ寄ったが、高鳴る血のひびきが、その人の肌へ感じられはしまいかと、左の手で、右の袂と乳の辺を軽く抑えた。
「あいにくと、鬢盥がございませんが」