Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
さっきの娘が死んだかのように、あおむけに床に仆れていた。
娘の後脳を膝の上にのせて、一人の男が坐っていた。
その横に竹の杖があった。
男が顔を上向けて呻いた。
「麻痺れるわい、身も心も!」
それは盲目の顔であった。
早瀬は思わず叫ぼうとした。
しかしようやく自分で堪えた。
(あの男だ!)
と、瞬間に思った。
(この嬰児の母親を殺した『裏切り者』と宣る男だ!)
(どうしよう! どうしよう!)
その男は、またも一人の女を――娘を犠牲にしようとしている!
(この子の母親の敵を討ち、あの娘の危難を救ってやりたい!)
(どうしよう! どうしよう!)
夢中で腕へ力をこめた。
嬰児が腕の中で苦しそうに動いた。
ギョッとして手をゆるめた。
(泣き出されては大変だ!)
この時胸を押されたため、苦しくなったか懐中の蝮が、五寸ほど体を外へ出した。
(そうだ!)
と、早瀬は突嗟に考えた。
(『裏切り者』は武術の達人、わたしなどには討てそうもない。この蝮を部屋へ放してやり、毒のある歯で噛ませてやろう)
彼女は蝮の頭を撫で、念ずるように口の中で云った。
「子供よ、お前、お願いします! 部屋の中へはいって、あの男に噛みついておくれ!」