Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
伴れの男が云った、「あんないそがしい男は見たこともない」
「そのうちにですね、部屋のまん中に硯が置いてあるのが、ごく自然にみえてきたんだそうですな」と先の男が云った、「――そうなるともう動かせない、硯はほかのを使って、あれはあのままにして置くよりしようがないんだそうです」
二人がうしろから来て、追い越してゆくのを見ると、どちらも中年の僧であった。暢気なもんだ、生きる苦労なんか爪の先ほども知らないんだろう、と栄二は心の中で呟いた。小さいころ聞いたのだが、蟻を一疋殺すのは坊主千人を殺すのと同じだ、という俗諺があった。つまり僧が生産者ではなく「穀潰し」だという意味だろう、貧しい人たちの怒りのこもった言葉のようだが、栄二はいまそのとおりだと思うのであった。
「このままどこかへいっちまうか」と彼は呟いた、「誰にもみつからない山の中へでもいって、のたれ死をしてやろうか」
「あぶねえ」と喚かれた、「馬だぞ」
栄二はとびのきながら見た、荷をつけた馬とあぶなくぶっつかるところだったのである。馬の息とその強いけもの臭さとで、顔を包まれたように感じ、栄二は持っていた手拭で顔や首筋を押しぬぐった。