Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
磯には雪の様な浪の動いているのも見ゆる。私は其儘其処の木の根につくねんと坐り込んで、いつまでもいつまでもこの明るくはあるが、大きくはあるが、何とも云えぬ寂びを含んだながめに眺め入った。富士の景色で私の記憶を去らぬのが今までに二つ三つあった。一つは信州浅間山の頂上から東明の雲の海の上に遥かに望んだ時、一つは上総の海岸から、恐しい木枯が急に吹きやんだ後の深い朱色の夕焼の空に眺めた時、その他あれこれ。今日の船の上の富士もよかった。然しそれにもまして私はこの芝山の間に望んだ寂しい姿をいつまでもよう忘れないだろうと思う。
風が冷く夕づいて来たのに気がついて身体を起すと、また此方側の麓には藍甕の様な海と泡だった怒濤とがあった。雑木の木の間にそれを眺め眺め下りて行くと時雨らしいものが晴れた空からはらはらと降って来る。最初はほんとに時雨か霰かと思った。が、まことは風が浪の飛沫を中空に吹きあげて、それが思わぬあたりに落ちて来るのである。汐けぶりなどいう言葉ではとても尽されない、汐吹雪、汐時雨、しかもそれがいい加減に高い山を越えて降って来るのである。そして海と風とのどよめきが四辺を罩めている中に、ちちちちと木の葉の様な眼白鳥が幾つとなく啼いて遊んでいる。